2016年7月7日に発売されたばかり、大注目のお値打ちレーザーカッター「HSGレーザー加工機」を見学するためにApple Tree 株式会社に突撃取材してきました。
前回、メーカーズバザールでHSGを見学した際に新井秀光社長からお誘いを頂きましてね。そりゃお受けしますよ。実際に使ってみたいですもん。
大阪日本橋でんでんタウン
暑い大阪にあって最も熱い(暑苦しい?)街、日本橋にApple Tree 株式会社はあります。オタクと電子工作の聖地、所謂でんでんタウンですね。ちなみに大阪の地名は「にっぽんばし」と読みます。東京は「にほんばし」。お間違えなきよう。
Apple Tree 株式会社に到着しました。ビルの1階が倉庫、2階はショールーム、3階がオフィスフロアになっています。新井社長はとても忙しそう。若くして日本のMakerブームのトップランナーとして活躍しておられます。先のメーカーズバザールでも協賛者として大きなブースを構えてイベントの盛り上げに尽力されてました。
まずは会社見学をしたい
この会社が扱う製品には日頃お世話になっているのですが、訪問したのは今回が初めてです。ものづくりに携わる人たちには、FLASHFORGE(フラッシュフォージ)というブランドで販売している3Dプリンターの方が有名だと思います。2階のショールームには沢山の3Dプリンターが並んでいましたよ。
写真の右手前に並んでいるのは、FDM方式の3Dプリンターですね。私にとっては日頃から使い慣れた製品です。FDM方式とは樹脂のフィラメントを熱で溶かして幾重にも積み重ねて造型する3Dプリンターです。世間でいう3Dプリンターはほぼこの方式です。
http://www.ricoh.co.jp/3dp/what/images/fdm_im2.gif?1
奥に見えるオレンジ色の樹脂カバーがついた製品は、光造型方式の3Dプリンターですね。実物は初めて見ました。とっても微細で高精細な造形ができる高価な製品なんです。造型物は積層痕がわからないくらい滑らかに出力されます。
HSGレーザー加工機
2階のショールームの一角にお目当のレーザー加工機が鎮座していました。期待のボルテージが一気に上がる!
左側の装置が「HS-Z4030」で、右側が「HS-Z4030RF」という機種になります。違いは装着しているレーザー光源の種類です。
左側のHS-Z4030は、CO2レーザーガラス管を装備しています。本格的なレーザーカッターとして一般的に使用される光源ですね。電気刺激された炭酸ガス混合体を基にしたガスレーザーと言われる発振器です。励起媒体である混合ガスをガラス発振管に封入しています。現在の装置は25Wですが、30Wや40Wもラインナップできるそうです。また25Wと30Wの値段差は特にないそうですよ。ガラス管の寿命は2000時間ぐらいで、交換コストは3万円台くらいとのこと。
本体価格: 650,000円(税別)
右側のHS-Z4030RFは、励起媒体であるCO2混合ガスを金属シールで完全に密封したアメリカ製金属発振管を使っています。特徴は基本的にメンテナンスフリーで長い耐用年数(3〜4年)があり、同じ25Wであっても3割程度高出力となります。
本体価格: 1,290,000円(税別)
操作系や各種機能を使って確認する
今回のデモは、HS-Z4030RFを使っておこないたいと思います。
あらかじめAdobe illustrator を使ったベクターデータを持参しました。データの読み込みはレーザー加工機とUSBで接続しているWindowsパソコンでおこないます。付属ソフトウェアにベクターデータを読み込ませます。このソフトウェアのユーザーインターフェイスは直感的でわかりやすいものでした。日本語表記にも変更できますが、私は英語表記の方が使いやすかったので英語にしています。海外製品の直訳日本語ってわかりにくいんですよ。
赤色のベクターデータは彫刻用、黒色のデータは切断用というように色毎にレーザー出力設定の使い分けができます。
レーザー加工機自体の操作は、カラー液晶タッチパネルでおこないます。操作パネルの周りを見ていて、非常停止スイッチやドア閉め忘れブザー、ドアダンパーなど、価格帯を考えると作りが本格的だなと感心しました。
パソコンから加工機へデータを転送すると液晶パネルへ出力イメージが表示されるのが直感的でいいですね。この液晶パネルも言語を色々選べます。下は中国語表記にした例です。
ハニカムテーブルを据え付けてみました。これはレーザー加工をする際に意外と大切な装備なんです。対象物の熱がハニカムの空洞へ逃げるので加工結果が安定します。HSGの場合、この装備がオプションではなくて、本体価格に含まれているのが他のライバルには無い特徴ですね。
装備品でいえばエアコンプレッサーも付属品に含まれています。レーザーヘッドには消炎の吹気機能が付いていて、ヘッド内部のレンズを煙から守っています。これもすごく大事な機能。木材を沢山加工したらワーク内に煙がモウモウと立ち込めます。エアコンプレッサーが付いていない激安レーザーカッターは高価なレンズをどうやって守っているんだろう。
集塵・脱臭機も大事な装備ですね。これはオプション品となるので本体と別に購入する必要があります。必要な集塵能力によって2種類のタイプを選択できます。
あと、HSGレーザー加工機を触った人が皆驚くのが、動作音の静かさ。レーザー加工機って結構大きな音がするんですよ。これはあくまで比較の話で、HSGレーザー加工機だって無音じゃありません。でも音が小さい方だと私も思いますよ。
アルミ(アルマイト)のマーキング加工
では実際に加工をやってみましょう。私が販売しているアルマイト材のiPhoneケースを持参しましたので、実演してみます。
おお、早いし、綺麗だし、完全に文句なしです。今までと同じように使えます。
デニムの加工
次にデニムの加工をやってみましょう。テキスタイルのレーザー加工をする際は、わずかな凹凸が加工結果に大きく作用します。板に糊付けしてからおこないますね。これも綺麗に加工できますねぇ。出力レベルを変更することでデニムの彫刻面の濃淡を調節できます。これは彫刻と言っても生地を削ってるわけじゃ無くて、染料を飛ばして白く模様を浮き上がるようにしています。
デニムでは彫刻だけでなく、切断も行ってみました。端面は鋭利に切断されています。
木材の加工
木材も加工してみましょう。これも私が販売している桜材のiPhoneケースを持参しました。
これも問題ないですね。十分満足できる仕上がりです。
この後、CO2ガラス管レーザーの機種「HS-Z4030」でもテストをおこなってみました。こちらも出力値を調整すれば、同じように利用できることを確認できました。
ライバル製品との比較
HSGレーザー加工機と同じA3サイズの加工エリアを持つレーザー加工機の比較サイトがありましたので、引用します。
特にシェアの高い製品を紹介すると以下のようになりますね。いずれの製品もガラス発振管タイプのCO2レーザーです。
ユニバーサル VLS2.30
VLS2.30|小さな卓上レーザー加工機|ヨコハマシステムズ
私は現在、ユニバーサルのレーザーカッターを時間借りして、製品作りをしています。これはとても良い製品です。使いやすいし、安定しているし。マテリアルデータベースがとても優秀で、素材にあった出力値をレーザーカッターの付属ソフトウェア側で提案してくれます。 HSGとの大きな違いは価格ですね。定価では160万円(CO2レーザー:30W)ほどします。ハニカムテーブルやエアコンプレッサー、集塵・脱臭機はオプションとなります。
トロテック Rayjet
コンパクトタイプのレーザー加工機、rayjet laser(レイジェットレーザー)
この製品もマテリアルデータベースを持っています。定価が180万円(CO2レーザー:30W)。ハニカムテーブルや集塵・脱臭機はオプションとなります。
ジーシーシー C180
定価が258万円(CO2レーザー:30W)。ハニカムテーブルやエアコンプレッサー、集塵・脱臭機はオプションとなります。カラー液晶操作パネルを装備しています。
こうして比較してみるとHSGレーザー加工機の低価格さが際立ってきます。A3サイズ・CO2レーザーである「HS-Z4030」では、ハニカムテーブルやエアコンプレッサーを本体価格に含んで定価が65万円です。オプションの集塵・脱臭機は別途必要ですがね。あとジャンルが違うので比較対象としてどうかと思いますが、超低価格製品もご参考までにリンクを貼っておきます。
HSGレーザー加工機のスペック
最後にHSGレーザー加工機の各機種共通のスペックを貼っておきます。ご参考まで。
本体サイズ | D650*W760*H490mm |
加工エリア | 400mm*300mm |
重量 | 85Kg |
テーブル上下高さ調節 | 100mmまで自動昇降可能 |
カットスピード | 0~48,000mm/min |
レーザー出力調整 | 1~95%自由に設定可能 |
最小加工文字 英文字 | 1mm*1mm |
解像度 | 4,000DPI |
繰り返し精度 | ≦+0.1mm |
ソフトウエア | ZYsoft |
電源 | AC110V 50Hz/60Hz |
加工環境 環境温度 | 0~45°,湿度:5~95%(結露しない環境) |
HSGレーザー加工機のお問い合わせはこちら
*こんな記事も読まれています