今回、どうしてもお会いしたかった人を訪ねました。
今、流行りの3Dプリンタやレーザーカッターを使って、実際に起業し、お店を出した方が、奈良の明日香村(飛鳥)にいるらしいのです。
これは、ぜひお会いして、お話を聞かねば。
しかし、なぜ飛鳥なんでしょう?
飛鳥といえば、6世紀ごろ日本で最初に開かれた都があった場所ですが、今ではのどかな田園地帯であり、風光明媚な観光地でもあります。起業にあたってどのような思い・戦略があって、この地を選んだんでしょう。
その方のお店の名前は、『飛鳥おもいで堂 』と言います。
飛鳥にまつわる造形にこだわり、3Dプリンターやレーザーカッターを使って、その場で生産・販売をしている今までにない業態のお土産屋さんです。
とっても興味深くないですか。私はとってもワクワクしています。
飛鳥へGO
飛鳥へは近鉄電車に乗って行くことにしました。最寄り駅は橿原神宮前駅。駅からはバスに乗って、目的地に向かいます。
バスの車窓から見える景色は、とても美しいのです。日本人の原風景と呼んでも良いのでは。見渡す限りの田園地帯とはいえ、ただの田舎とは違うように感じました。もとは都だった土地が持つパワーでしょうか。ところでローカルバスで行く旅は、ちょっとイイですね。遠足に来ている気分になります。
目的地はここ。万葉文化館です。ここのお隣、明日香民族史料館という観光施設にテナントとして入っているそうです。見渡すとそこら中に古墳がありますよ。まさに奈良という感じです。
早速、明日香民族史料館に入ってみましょう。
入り口に看板が出ていました。埴輪フィギュアの写真でお出迎えです。3Dプリンタ製でしょう。施設内には食事が出来るところがいろいろあるみたいですね。そういえばこの辺は三輪素麺が名物でした。日本三大素麺の一つです。
飛鳥おもいで堂に到着しました。お店の外観はこんな感じ。一見普通のお土産屋さんに見えますが、入口付近に黒くてゴツい機械が置いてあるところが違いますね。これはデルタ型の3Dプリンタです。
ついにお会いできました。代表者の西川さんです。気さくにお迎えしてくださいました。店内には3Dプリンタが4台くらいあって、常にどれかが稼働しています。製造工程をお客さんにライブで見せることで、お土産屋にエンターテイメント要素を持たせているのですね。
聞きたいことは山ほどある
早速ですが、西川さんにいろいろ質問をぶつけてみたいと思います。
はじめまして
はじめまして
唐突ですが、どうしてこの飛鳥で起業しようと思ったのですか?
きっかけはこの土地に対する愛情なんですね。
もともと3Dプリンタやレーザーカッターに関わるお仕事をされていたんですか?
開業には、お金がずいぶんかかったでしょう?国金(日本政策金融公庫:開業資金などを融資する政府系金融機関)で借りたりとか?
いいえ、借りてないんです。だから出来るだけお金をかけないように知恵を絞りました。最初は机を並べただけの露店で始めました。縁あってここ明日香民族史料館に移りましたが、ここは一か月の賃料が8000円なんですよ。
安っ‼
あと明日香民族史料館の中にあるチャレンジショップは行政が開業支援の為につくったものなので3年間しかおれません。もう1年がたちました。あと2年間以内に次の展開を考えないといけないですね。
次の展開について具体的な話を聞いてもいいですか?
もちろん
地道な努力が実を結ぶ
また商品自体の魅力を高める努力もしています。例えば特産の吉野ヒノキやスギなど、ここにしかない素材をうまく活用したりしています。デザインも飛鳥の良さを引き出そうと日々研究しています。とても熱心なファンの方もいて東京からわざわざお越しくださり、何万円分もお買い上げ頂けた方もおられました。
いやあ、ここは企業秘密なところで詳しくは言えません(苦笑)。しかし単一のソフトだけでこの造形は無理なんです。ソフト毎の特性を活かしていますし、実はハードウェアの特性の違いも考慮に入れているんですよ。これ以上はご勘弁を(笑)。
田舎で変わったことをやると注目される
田舎で変わったことをやるとすぐに注目を受けます。地元奈良のテレビ局の取材を受けたこともあります。都会の中では埋もれてしまうところが、田舎では突き抜けられる。
ふるさと納税という制度があるでしょう。行政とタイアップして、明日香村への寄付のお礼品に当店の商品も加えてもらいました。知恵を絞っていろんな展開を進めていこうと思っています。
すごいですね。今後の展開がとっても楽しみです。本日はどうもありがとうございました。
飛鳥おもいで堂で販売している商品たち
飛鳥おもいで堂の店内をぐるりと見てみましょう。アイデアと地元愛の詰まった商品が目白押しです。
この飛鳥の巨石をオブジェは、開店直後、最初に作った商品だそうです。
依頼者を造形する3Dフィギュアも記念品として人気があるそうです。
可愛い埴輪の形をした「埴輪スタンプ」。手書きの図柄や文字をスタンプにもできます。20分程度でお渡しが可能です。修学旅行生にとても人気があるそうですよ。館内で食事をしている間に完成します。
有名なキトラ古墳の四神図を極めて精密に彫刻した作品です。今、西川さんの一押しだそうです。是非実物をご覧になってください。
お店から帰る頃に運良く大仏フィギュアのライトアップを見ることができました。ぷっくり膨らんだほっぺが愛らしい東大寺の盧遮那仏さんです。これとは別にスマートな飛鳥大仏バージョンもあるんですよ。ぜひお店に足を運んでご覧になってくださいね。
これは新しい生き方のモデルケースでは
今回、飛鳥おもいで堂を訪問して、本当に実践的で価値のあるお話が聞けました。美しい明日香村で着実に商売を広げる姿を拝見して、昨今のある意味浮ついた地方移住ブームとは異なる地に足をついた生き方を目の当たりにした思いです。お店では西川さんの奥様と少しお話できたのですが、旦那様を信じて支える芯の強さを感じました。
何かを始めるには蛮勇にも似た勇気が必要なんですね。サラリーマンとして成功者だったのに、本当にゼロから再出発するなんて驚嘆しかありません。勇気・努力・家族の支え・出会い・地方に眠るお宝・田舎だから目立つという逆転の発想、行政との正しい協力関係。西川さんのお話には新しい生き方のヒントがそこらじゅうに詰まっているように感じました。
飛鳥おもいで堂について詳しい情報はこちら
奈良県立万葉文化館のHP(交通アクセス情報はこちらからどうぞ。隣の明日香民族史料館ですのでお間違えなく)
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